学会の基盤強化と研究活動の充実のために
令和2年6月の理事会において本学会代表理事に選出され,2期4年間にわたり会員並びに役員の皆様とともに、学会の活性化に向けて、活動してまいりました.そして,退任の時期を迎えた令和6年6月の理事会において,思いがけず,代表理事に再任されることになりました.
学会の定款上,代表理事の任期は2期までと決められておりますので,次の方にバトンタッチをするタイミングでしたが,定款附則には,理事会が認めた場合には,さらに1期に限り任に当たることができると定められています.新理事の皆様が,この定款附則をもとに,再任のご指名をしてくださった形です.コロナ禍の影響等もあり,学会を取り巻く状況や学会活動はやや停滞した観があるかもしれませんが,本学会の基盤強化と研究活動の充実に向けて,非力ながら努力してまいりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
さて,2020年始めから社会的に大きな影響をもたらした新型コロナウイルス感染症の感染拡大は,本学会の活動スタイルにも大きな変更を迫りました.実際, 全国大会, 春期・秋期の研究大会, 高大連絡協議会,そして授業づくり研究会等の主要な学会活動は, 「誌上発表」からスタートし,その後オンライン形式での開催へ,そして昨年度からようやく従前のような対面形式での開催が可能になってまいりました.一方,理事会や総会,学会の各部幹事会や委員会等も,主としてオンラインで行われるようになりました.
このような学会を取り巻く環境の変化の中,理事会に会員制度等改革特別委員会を新たに設置し, 5年間を見据えた事業のあり方とその具体的方策を検討し,次の5つの柱からなる「アクションプラン」を策定しました.
・メディア戦略による情報発信力の強化
・各地区からの学会活動の活性化
・学会に対するニーズアセスメント
・新規会員の開拓とメンバーシップの強化
・法人事業の運営と学会マネジメントの強化
創立以来すでに100年以上経過する本学会ですが,数学教育の研究と実践の世界で大きな役割を果たす一方,近年は,長期的な視点から捉えられるべき様々な課題も山積しています.
例えば,全国的に学校関係者の年齢構成が変わる中,会員の構成にも大きな変化がみられ,年齢構成のばらつきや,女性会員比率の低さ,都道府県別の会員数とその人口比率の偏りがみられます.また,会員数に減少傾向もみられます.
今年9月から本格的にスタートした新体制では,このアクションプランの実施を中核に据えて,活動を展開してまいります.
第一に, すでに活用しているメルマガのコンテンツ充実による学術情報配信の強化や,情報「鮮度」の向上により会員に役立つ情報の提供を図ることです.この活動の一環として,例えば,「若手教員のための研究を語る会」を今年2月,6月に開催しています.また,学会Webサイトの機能の充実のために, 学生会員向けコンテンツの導入や実践研究の可視化等を検討しています.
第二に,現在は会員の少ない地域を対象とするセミナーの新設や, 学会誌での「地区便り」の発信等により,各地区の皆様のエンゲージメント(当事者性)を高めたいと考えます.
第三に, 本学会に対する会員・非会員のニーズを把握するための調査を実施して,例えば,全国大会を開催していただく各地区へのインセンティブの付与, 大会参加者による実践紹介の機会提供のための学会誌の構成の見直し等を検討しています.また,学会の生命線でもある学会誌の扱いについては,学会誌再編WGを設置し,検討を進めています.
第四に,小学校で約7割を占める女性教員や指導主事層の教員にとって魅力ある事業を展開することを検討しています.また若手教員や学生の皆さんの学会への参加をお誘いできるよう,「準会員」制度の対象範囲を拡充し,満30歳未満の若手教員や学部学生・短期大学生を対象とした新しいメンバーシップを導入しました.さらに,大会参加や発表についてのマイレージやポイントによる活動の視覚化等の仕組みを検討し,全国大会で継続的に研究発表をされた会員の顕彰制度を設定しました.すでに,第100回東京大会以降の全国大会で5回以上発表された会員の皆様には,新たな「プレミアム会員証」を公布し,学会誌でもご紹介しています.
第五に, 法人事業の運営, 学会業務のコンサルタント委託や, 会費システムの見直し,事務局運営のアウトソーシング等についての検討を進めています.
日本数学教育学会が魅力ある学会として多数の皆さんに参加いただけるように,会員の皆様のお力をお借りして,学会の基盤強化と活動の充実を図りたいと考えています.どうぞよろしくお願いします。
公益社団法人日本数学教育学会 会長
~ 過去のあいさつ文(2020年7月)~
令和2年6月7日に開催された日本数学教育学会の理事会において,新しい理事長に選出されました.微力ながら学会のために尽力してまいります.どうぞよろしくお願いいたします。
折からの新型コロナウイルス感染症の全国的な感染拡大の状況は,全国の学校における長期の臨時休業を余儀なくし,その後も社会全体に未曾有の影響を与えています.先行きが不透明なこの状況下,世界全体が,長期にわたり新型コロナウイルスとともに生きていく社会のあり方を模索する試練の時代を迎えています.このような状況にあっても,二年前に創立百周年を迎え「次の百年」への歩みを始めた本学会は,歩みを止めるわけにはいきません.以下に,学会にとっての重点課題を列記してみたいと思います.
第一は,学会の生命線である数学教育研究の一層の推進と実践の改善への寄与です.この点では,全国各地区の組織・団体との連携による情報共有・発信の強化が欠かせません.そのためには,各種の研究大会の充実,学会誌を中心とする学会の学術情報発信の機能強化,そして学会誌自体の電子化についても検討する必要があると考えています.
第二は,公益社団法人としての本学会の機能強化で,本学会はステークホルダー(利益関係者)への関与を一層明確にする必要があります.会員の皆様はもとより,広く学校関係者,子ども達と保護者,地域社会の人々,国や地方自治体,そして数学教育関連の企業等もその対象です.公益性をもつ本学会が,社会的責任を果たすための方策を,具体化していく必要があると思います. 第三は,若い世代を巻き込むメンバーシップの強化です.学校教員の年齢構成が大きく変容した現在,次世代の数学教育を担う若手教員や学生・大学院生が学会に多数入会していただき,数学教育研究を目指す若い世代,教科に強い教員が結集する重要な場所としたいと思います. 第四は,数学教育研究の国際化への対応と本学会からの世界への研究成果の発信です.世界的に進行する数学カリキュラム改革動向の把握に基づく次世代の数学カリキュラムの開発,日本発の「授業研究」による教科教育研究の推進を一層充実していく必要があると考えています. 現在直面するこの試練の時代を乗り越え,数学教育研究の推進と学校や社会での数学教育実践の向上に本学会が寄与できるよう,会員の皆様のお力を結集していただくことをお願いし,ご挨拶といたします.