渉外部だより:第13回数学教育世界会議に出席して
-渉外部便り-
  • 1.概要

     第13回数学教育世界会議(13th International Congress on Mathematics Education:ICME13)が,2016年7月24日(日)~31日(日)までの8日間にわたって,ドイツ(ハンブルク)のハンブルク大学・ハンブルク会議センターで開催された.ドイツでの開催は,1976年の第3回大会以来の2回目となる.本大会は,Gabriele Kaiser氏(ハンブルク大学,ドイツ)が国際プログラム委員長等を務められ,国内組織委員長としてMarianne Nolte氏(ハンブルク大学,ドイツ)がその役割を果たされた.

     

    図1 開会式の様子(左はGabriele Kaiser氏の挨拶,右は学生らによるオーケストラ)

     

     会議は,朝8時30分から夕方7時まで(月曜日と土曜日は夕方6時まで,水曜日は夕方6時30分まで),お昼休みを1時間30分から2時間設け,ゆとりをもった計画で進められた.また,ハッピーアワーを意味するGet-Togetherも,簡単な食事と飲み物が用意され、国を越えて交流の図れるよい場がつくられていた.参加者は106か国から3750名で,参加者の多い国名から順に10か国挙げていくと,米国(596名),ドイツ(435名),中国(143名),日本(141名),イギリス(133名),ブラジル(124名),オーストラリア(114名),トルコ(100名),カナダ(96名),南アフリカ(85名)となり,日本の参加者数は第4番目になる.

  • 2.クライン賞・フロイデンタール賞・カステルヌオーヴォ賞

     数学教育において質の高い研究が存在していることを強調するために,ICMI(数学教育国際委員会)により3つの賞,クライン賞とフロイデンタール賞(ともに2003年から),そして,カステルヌオーヴォ賞(2015年から)が設けられ,これらの表彰式は,ICMEの開会式において行われることになっている.

     クライン氏(Felix Klein)は,1908年にICMIの初代会長を務めており,数学教育を科学的学問として確立しようとした人物である.この賞は,生涯にわたって数学教育に多大な貢献をした研究者に贈られるもので,これまで第1回(2003年)はGuy Brousseau氏(フランス),第2回(2005年)はUbiratan D’Ambrosio氏(ブラジル),第3回(2007年)はJeremy Kilpatrick氏(米国),第4回(2009年)はGilah Leder氏(オーストラリア),第5回(2011年)はAlan H. Schoenfeld 氏(アメリカ)が表彰されている.今回は,第6回(2013年)としてMichèle Artigue 氏(フランス),第7回(2015年)としてAlan J. Bishop氏(オーストラリア)が表彰された.

     フロイデンタール氏(Hans Freudenthal)は,1967年にICMI会長に就任し,1969年に第1回数学教育国際会議を開催した人物である.また,1968年にはEducational Studies in Mathematicsを発行している.フロイデンタール賞は,最近10年間の研究で優れた数学教育の研究を行った研究者に贈られるもので,これまで第1回(2003年)はCelia Hoyles氏(イギリス),第2回(2005年)はPaul Cobb氏(米国),第3回(2007年)はAnna Sfard氏(イスラエル),第4 回(2009年)はYves Chevallard 氏(フランス),第5 回(2011年)はLuis Radford 氏(カナダ)が表彰されている.今回は,第6回(2013年)としてFrederick K.S. Leung氏(香港),第7回(2015年)としてJill Adler氏(南アフリカ)が表彰された.

     カステルヌオーヴォ氏(Emma Castelnuovo)は,イタリアの女性数学教育者であり,その生涯の多くを中等教育学校の教師に捧げ,戦後のイタリアの数学教育に多大な貢献をした人物である.また,CIEAEM(数学指導の研究・改善のための国際委員会)会長やICMI実行委員会委員を歴任するなど,世界の数学教育にも尽力した.カステルヌオーヴォ賞は,数学教育の実践において顕著な功績のある個人,グループ,プロジェクト,機関,組織に贈られるもので,今回は,第1回(2015年)としてHugh Burkhardt氏・Malcolm Swan氏(イギリス)が共同受賞した.

     

    図2 表彰式の様子(左からHugh Burkhardt氏,Alan J. Bishop氏,Jill Adler氏, Michèle Artigue 氏,Frederick K.S. Leung氏)

     

  • 3.日本人の招待講演者、座長等の貢献

     日本からは,礒田正美氏(筑波大学)がサーベイチームのメンバーとして,小山正孝氏(広島大学,本学会副会長),浪川幸彦氏(椙山女学園大学)が招待講演の講演者として貢献された.さらに,トピックスタディーグループ(TSG,Topic Study Groups)では,下記のメンバーが各グループの運営に貢献された.

     

    【TSG(トピックスタディーグループ)】
    • TSG 4:垣花京子氏(筑波学院大学名誉教授)
    • TSG18:宮崎樹夫氏(信州大学)
    • TSG21:池田敏和氏(横浜国立大学,本学会理事)
    • TSG26(座長):清水美憲氏(筑波大学,本学会副会長)
    • TSG47(座長):日野圭子氏(宇都宮大学)
    • TSG49(座長):藤井斉亮氏(東京学芸大学,本学会会長)
    • TSG51:宮川健氏(上越教育大学)
  • 4.日本の数学教育についての発表(National Presentation of Japan)

     学会誌第98巻第5号・6号のニュースレター及び当学会のホームページにおいて紹介している通り,日本数学教育学会が中心となって,カリキュラム,教科書,特色ある問題(折り紙,緑表紙の問題,裁ち合わせ,さしがね),国内外の学力調査,「授業研究」に代表される教師教育等,日本の数学教育について発表を行った.藤井斉亮氏(東京学芸大学,本学会会長),清水美憲氏(筑波大学,本学会副会長),瀬沼花子氏(玉川大学,渉外部長),池田敏和氏(横浜国立大学,渉外部副部長)がオーガナイザーを務め,発表等では,上記各氏以外に小山正孝氏(広島大学,本学会副会長,全国数学教育学会副会長),日野圭子氏(宇都宮大学),岡崎正和氏(岡山大学,渉外部幹事),伊藤伸也氏(金沢大学,渉外部幹事),中和渚氏(東京未来大学,渉外部幹事),佐伯昭彦氏(鳴門教育大学,渉外部幹事),小泉健輔氏(高崎健康福祉大学,渉外部幹事)が担当した.当日は,複数のセッションが同時開催されているにも関わらず,参加者が120名を超えるほどの盛況であり,日本の数学教育が諸外国に注目をされていることを改めて実感した.また,特色ある日本の算数・数学の問題を紹介した際には,参加者に実際に折り紙で鶴を折ってもらったり,ピースを並び替えて図形を作ってもらったりするなど,教材に直にふれてもらう機会を設けた.興味津々に取組んでいる参加者の姿が印象的であった.

     

    図3 National Presentation of Japanでの発表の様子(左は藤井斉亮氏,右は瀬沼花子氏)

     

    図4 National Presentation of Japanでの参加者の様子

     

    図5 National Presentation of Japan 実施後に
    -Max Stephens氏, Jerry P. Becker氏を囲んで-

     

  • 5.日本ブース

     今回は,上記の日本の国別発表の他に,日本数学教育学会から,瀬沼花子氏(玉川大学,渉外部長)を中心に,日本の学習指導要領,日本の算数・数学教科書,渉外部で作成した特色ある算数・数学問題(日英版)等,日本の数学教育についての広報もなされた.数多くの人が訪れ,用意した算数・数学の問題を一緒に楽しみながら取組み,交流を深めることができた.ブースでは,渉外部長の瀬沼花子氏, 渉外部副部長の池田敏和氏(横浜国立大学,本学会理事)をはじめ,伊藤伸也氏(金沢大学),岡崎正和氏(岡山大学),川上貴(西九州大学),河崎哲嗣氏(岐阜大学),小泉健輔氏(高崎健康福祉大学),佐伯昭彦氏(鳴門教育大学),中和渚氏(東京未来大学),馬場卓也氏(広島大学),峰野宏祐氏(東京学芸大学附属世田谷中学校)(五十音順)の渉外部幹事が担当した.また,渉外部以外でも,坂梨知氏(世田谷区立深沢中学校),横浜国立大学の大学院生には多くの時間をブースで担当をして頂いた.この場を借りて,お礼申し上げます.

     

    図6 ブースの様子(左上は教材等の案内,中央は本学会元会長中原忠男氏ら,右上は2016年の学会開催県を示す本学会ポスター,左下は展示した教科書及び特色ある算数・数学問題,右下は渉外部幹事を中心として)

     

  • 6.ICME14

     ICME14は,中国(上海)のSCECIS(Shanghai Convention & Exhibition Center of International Sourcing)で,2020年7月12日(日)から19日(日)の期間に開催される予定である.Website:http://icme14.org/

  • 謝辞

     

     

     本稿で使用した写真の一部は,ICME13のホームページで公開している写真を使用させて頂きました.この場を借りて,お礼申し上げます.

(渉外部幹事,西九州大学子ども学部,川上 貴)