ごあいさつ

会長に就任して
東京学芸大学教育学部教授 藤井斉亮

 去る6月29日に東京学芸大学で開催されました日本数学教育学会・新理事会において、理事の互選により会長に選出され、受諾致しました。本学会は前会長の清水静海先生や前庶務部長池田文男先生のご尽力もあり、平成26年4月1日より公益社団法人日本数学教育学会となりました。これにより、定款上は代表理事ということになりました。責任の重さを感じ、身の引き締まる思いです。ここでは、会長就任にあたり、いくつかのことを述べて、抱負に代えさせていただきます。

 まず、これまでの歴史と伝統、そして実績を踏まえた上で、公益社団法人としての第一歩を誠実かつ的確に踏み出したいと思います。そのために公益社団法人としてのあるべき姿を検討する委員会を立ち上げたいと考えています。日本数学教育学会はもちろん学会ですが、研究面だけでなく、より良い算数数学教育の実現に向け、教育面でもそれなりの役割を担うことが期待されています。数学が実生活や他分野で活用されている実際を皆さんに理解していただき、数学の有用性を鋭意発信していくことも本学会の重要な使命です。また、数学教育の対象を学校教育に限定せず、より広くとらえる必要があります。生涯学習の視点から一般社会人や就学前の幼児を対象にした数学教育も、研究と実践の両面からこれまで以上により積極的に視野に入れていく必要があるでしょう。

 本学会が公益社団法人となることで、社会的信用も増大しプラス面もあるのですが、一方で、公益法人として満たすべき条件に基づいて理事や代議員の人数が制限され、各県とのつながりが希薄になることが危惧されます。定款上は、理事や代議員の人数は制限されていますが、実際の運用面では工夫が必要です。特に、夏の全国算数・数学教育研究大会は100年近い歴史と伝統があり、各県を巡回して今日に至っていますが、そこでは多くの先生方にご協力を頂いています。運営面だけでなく、研究発表においても非会員の先生の発表があり、幅広い層の先生方に支えられています。この絆をこれからも大事にしていかなければなりません。また、組織として、形の上でも明確に表現する工夫を模索していきたいと思います。

 第二に、教育課程の改訂の時期をひかえ、本学会としてより良い数学教育の実現に向けた提言を適宜、積極的に進めていきたいと思います。第2回春期研究大会では、「新教育課程編成に向けての編成原理及び重点事項について」という表題で学会指定課題研究が行われ、「数理科学的な意思決定力を育む数学教育の構築」が創成型課題研究として設定されていました。今後も、数学の有用性と重要性を国民の皆様に理解して頂くとともに、算数数学は、論理的な思考力・判断力を育む重要な教科であることを主張していかねばなりません。研究面においても、これから必要となる「力」の内実をより明確にしていくことが重要かつ必要と考えます。

 第三に、より良い数学教育の実現に向けた活動の充実です。具体的には、我が国が明治以来伝統的に実施してきた授業研究をより一層深め、活発化していきたいと思います。授業研究の世界的普及に伴い、日本の教師集団が授業研究のフロントランナーとして注目され極めて高く評価されていますが、当事者である日本の先生方には、その自覚がなく、また、授業研究の価値と特徴を十分に理解しないままに実践している実態があるからです。本学会として、これまで先生方が百年以上の歴史の中で積み上げてきた実践知を明確にして理論化し、授業研究の卓越性を海外にも鋭意発信していきたいと思います。

 一方、子ども達の実態も考慮しなければなりません。実際、TIMSS2011やPISA2012では、数学を学ぶ意義についての意識や数学を学ぶ意欲が国際的に低いことが明らかにされています。改善は、日々の授業実践を通して行うしかなく、ここに、授業研究を連動させる意義があります。授業研究は初等教育段階では活発ですが、中等教育段階ではそうではありません。本学会が率先してこの実態を改善する牽引力となる必要があると考えます。

 何れにしましても、会員の皆様のご支援・ご協力が必要です。率直で忌憚のないご意見やご指導・ご鞭撻も含めて、どうぞよろしくお願い申し上げます。

平成26年7月16日
公益社団法人 日本数学教育学会
会長 藤井 斉亮